昏炎:第六話です。
未成年および現実と妄想と区別がつかない方はこのコンテンツを読まないで下さい。
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都内某所。
私はダブルのベッドの上で薄暗い天井を眺めながら、取り留めの無い事を考えていた。
隣にはユカリという少女が安らかな寝息を立てている。
クライアントとして、また処置対象としての出会いからもう半年。
彼女は組織への加入を果たすと共に、正式にクラギ氏の遺産相続人として指名され、
氏の後継者としての道を進もうとしている。
彼女が夜帳(やや)へ入ってからのち、私は毎週処置についてのレクチャーを行うようになっていた。
生理学、薬学、解剖学・・その内容は多岐に渡り、そしてレクチャーは知識だけではなく経験・・
つまり素材に対する処置も含むものになってきていた。
そういえば、こうやって体を重ねるようになったのはいつごろだっただろうか・・
「考え事ですか?」
「すまない、起こしてしまったかな?」
左手が彼女の髪に掛かっている
どうやら無意識に触れていたらしい、自重せねばな・・
「いいんです。私も先生に話したい事もありましたし。
それに、髪を撫でてもらうのって嬉しいですよ。」
そう言って、彼女は身を寄せる。
私自身はと言えば、この感情を持て余し気味ではあるのだが。
「それで、話というのは?」
少女が少し息を吸い込む。緊張しているのだろうか。
「先生・・
私の旦那様になって頂けませんか?」
「ああ、構わないよ。」
「え!?」
驚きの声を上げる。少しの間はあったが、即答の範囲ではあるだろう。
「いくつかの可能性の中の一つとしては考えていたんだよ。
そして、そう言われた時に私には断る理由がない。」
「先生・・」
「不安だったかい?」
「・・・そうですね。
私はこれでいいのか?って、いつも不安になります。」
「大丈夫。君の腕は私が保証するし、体組織の適合も問題ない。
君なら冷静に処置を進めることが出来るはずだ」
故意にピントのずれた答えを返す。
「ええ、たぶん。きっと私はすごい興奮するけど、サトコの事は失敗しないと思います。
もう何度も触れて・・あの子の体の事は私が一番良く知っていますから。
でも・・」
「このまま進むのが怖い。と」
彼女が私に抱きついてくる。きつくきつく、 -すがる様に。
「私ほんとうにサトコが大好き。
優しいあの子とずっと一緒にいたい。
でもそれ以上に、あの子を壊したいって思ってしまう。
ここで止めれば幸せが続くのに・・それでも・・」
彼女の葛藤こそが、私を惹きつけて止まない。
幸せを求め、背反を求め、そして破滅を与える。
この少女の生き方を見ていられるのであれば、
たとえ地獄の業火に焼かれても惜しくはあるまい。
それでも
私は黙って髪を撫で付ける。
「先生は何もおっしゃってくれないんですね・・」
「残酷なようだけど、ここでの選択に私の価値観を混ぜることは出来ない。
今の悩みを超えた君の純粋な意志であること、それが重要なんだ」
「・・・・・」
おそらく彼女の叔父であるクラギ氏の意向もそうであろう。
他人から請われて行う、そんな要素が一つでもあれば彼女の輝きは曇ってしまうのだ。
だが私を彼女と自由に会わせているのは、何かの思惑があっての事だろうか?
今晩もそれを考えていたが、やはり答えは出ない。
とはいえ彼女からの言葉があった以上、私はやることを決めねばならない。
静寂が部屋を支配する中。私は彼女の右手を取ってそっと口づけた。
「えっ!」
「どんな選択をしても、私はそれを支えよう。
それが夫としての権利だ。いいかい?」
「先生・・」
彼女ははにかんで私に接吻をする。
「抱いて下さい。今だけ頭の中が真っ白になるように」
「わかった」
私は頷いて彼女をベッドに組み敷いた。
私は自らの獣性を開放し、請われて彼女の中に精を放った。